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鼻は「呼吸のフィルター」であり、「空気の調整装置」
人間は本来、鼻で呼吸するようにできています。
鼻の中では吸い込んだ空気が加温・加湿・除塵され、最適な状態で肺へ届けられます。
一方、口呼吸になるとこれらの機能が働かず、乾燥した冷たい空気が直接のどへ流れ込み、炎症を起こしやすくなります。
さらに、鼻の奥には「耳管」という耳とつながる管があり、鼻をすする癖や鼻づまりによって耳の圧力バランスが崩れ、滲出性中耳炎や耳閉感の原因にもなります。
鼻は、呼吸だけでなく、耳・のど・脳にまで影響を及ぼす非常に重要な器官なのです。

鼻づまりが引き起こす「いびき」と「眠りの質の低下」
正常な睡眠時、私たちは鼻から静かに空気を吸い込み、軟口蓋（のどの奥のふた）が閉じて気道を保ちます。
ところが鼻づまりがあると、空気が通りにくいため吸気時に陰圧が強まり、
軟口蓋や舌の根が振動して「いびき」が発生します。

鼻呼吸ができない状態が続くと、次のような悪循環が起こります。
① 鼻づまり → 空気が通らない → 口呼吸に移行
② 口呼吸 → のどが乾燥・腫脹 → 気道が狭くなる
③ 気道狭窄 → 軟口蓋・舌が沈下 → いびき発生
④ 無呼吸 → 一時的に呼吸が止まる → 睡眠の質低下・日中の眠気

特に子どもでは、鼻炎やアデノイド肥大などがあると「口を開けて寝る」「朝ぼんやり」「集中力が続かない」といった症状が出やすく、
成長期の顔つき（口呼吸顔貌）や歯並びにも影響することがあります。
成人では、鼻中隔弯曲症や下鼻甲介肥大、アレルギー性鼻炎などによる鼻閉が原因でいびきが増え、睡眠時無呼吸症候群（SAS）を悪化させることも少なくありません。

睡眠の質が“脳の老化”にも影響する
スウェーデンのカロリンスカ研究所による最新研究（UKバイオバンク登録者 約2.7万人対象）では、
睡眠の質が悪い人ほど脳の老化が早く進む傾向が明らかになりました。
9年間の追跡で、睡眠の質が悪い人はMRI上で「脳年齢」が実年齢より約1歳老けていることが判明。
背景には、体の中の慢性的な炎症反応（CRPなどの炎症マーカー上昇）が関係していると考えられています。
眠りが浅い、無呼吸やいびきで断続的に覚醒するような状態では、体は常に軽いストレス状態にあり、交感神経が優位になって血圧や脈拍が上昇します。その結果、炎症が長引き、脳の老化スピードを早めると考えられています。

睡眠中に働く“脳のお掃除システム”
眠っている間、脳の中では「グリンパティックシステム」と呼ばれる老廃物排出の仕組みが働いています。
これは、起きている間にたまった不要なタンパク質や代謝物を脳脊髄液が洗い流す“お掃除時間”。
このシステムは深い睡眠（ノンレム睡眠）中に活発になるため、鼻づまりやいびきで睡眠が浅くなると、老廃物が十分に排出されず、脳疲労や認知機能低下につながる恐れがあります。

鼻呼吸を取り戻すことが、質の良い睡眠への第一歩
鼻づまりを放置せず、鼻呼吸を確保することが、いびきや睡眠の質改善の基本です。
原因に応じて以下の治療を行います。

アレルギー性鼻炎：抗アレルギー薬・点鼻ステロイド・鼻洗浄
副鼻腔炎（蓄膿症）：抗菌薬・内視鏡手術（慢性例）
鼻中隔弯曲症：鼻中隔矯正術
下鼻甲介肥大：レーザー・ラジオ波焼灼術
習慣的な口呼吸：鼻づまり治療＋生活習慣指導

寝る前の鼻洗浄や加湿、アレルギー対策、就寝時の体位（横向き寝）も効果的です。
鼻の通りを整え、鼻で呼吸して眠るだけで、「いびきが減った」「朝の目覚めがすっきりした」という方も多く見られます。

鼻呼吸が“脳を守る眠り”をつくる
鼻で呼吸してぐっすり眠ることは、単に「静かに眠る」ためではありません。
それは、脳と体をリセットし、翌日へのエネルギーを充電するための大切な時間を守ることでもあります。

鼻づまりを軽視せず、日々の睡眠環境を整えることが、結果的に「脳の若さ」と「心身の健康」を支える最もシンプルで確実な方法なのです。

まとめ
・鼻づまりは、いびきや睡眠の質の低下を招く。
・睡眠の質が悪いと、脳の老化や炎症が進む。
・鼻呼吸を保つことで、睡眠中の“脳のお掃除機能”が働きやすくなる。
・鼻づまりを治すことは、「静かな眠り」だけでなく「脳の健康維持」にも直結する。

引用元　https://wired.jp/article/poor-sleep-accelerates-brain-aging-inflammation-link/