日帰り手術

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日帰り手術の目的

欧米では、1980年ごろより日帰り手術が始まり、現在ではよほどの理由が無い限り、ほとんどの手術が日帰りとなります。しかし、本邦では保険制度の違いも影響していますが、日帰り手術は未だ浸透していないのが現状です。当院では、開院当初(2000年4月)より中耳炎や副鼻腔炎に対して局所麻酔による日帰り手術を行ってきました。高度な中耳炎や難聴に対する鼓室形成術およびアブミ骨手術や副鼻腔炎に対するESSを全例に日帰りで行っている施設は、現在でも国内では当医院以外ほとんどないものと思います。

当院が日帰り手術を積極的に行うようになった理由

1.手術の安全性が高まったこと

当院では、あらゆる点で手術技術の改良に取り組んでおります。一例を挙げると耳の手術で問題となる術後のめまいは、予定外入院(日帰り手術の予定が何らかのトラブルのため入院する)の主たる原因です。特にアブミ骨手術では、術後に外リンパ瘻(内耳のリンパ液が漏れ出る状態)に伴うめまいが起こる確率が高く、本邦では日帰りどころか通常2〜3日のベッド上安静(トイレ、食事を含めて歩行禁止、ベッド上で安静維持)と1〜2週間程度の入院が、ほとんどの病院で行われています。これに対して当院では、外リンパ瘻を生じない工夫(薄い膜組織でシールドする方法)で術後のめまいを防止しており、患者さんは手術当日に歩行帰宅されています。これらの技術的改良などで、入院が必要となるトラブルが9年間連続で発生しておらず、当院における予定外入院の確率は0.3%(2/667)で、欧米報告の約4%と比較してもかなり低率となっています。また、副鼻腔炎の手術では、視器の損傷(ものが二重に見える、失明する)など重大なトラブルが起こることがあります。特に、最近ではマイクロデブリッダーといわれる電動式切除機器が盛んに使用され、術者にとっては手術がよりスピーディーになりましたが、威力が高いために視器の損傷トラブルが増加しています。当院ではパワーパンチという術野を常に洗浄しながら使える手動式切除鉗子を開発し多数の手術を行ってきましたが、視器の損傷は一例もなく、短時間の手術が可能です。

2.術後の手術成績が大幅に改善したこと

あらゆる点で手術技術の改良に取り組んでおり、入院手術を行っていた勤務医時代よりも手術成績、特に聴力成績と再発率が大きく改善しました。また、これらの内容を耳鼻咽喉科の多くの学会で報告してきました。

3.術後の通院回数が大幅に減少し、早期の社会復帰が可能となったこと

日帰り手術といっても「術後毎日通院が必要であれば、入院する方がましだ」ということになります。当院では、鼻の手術、耳の手術共に手術後2〜3日で通常の日常生活や軽労働は可能となり、早期の社会復帰が可能です。


当院が全身麻酔よりも局所麻酔を選択する理由

1.局所麻酔でもほとんど痛みがない手術が可能なこと

手術中は安定剤の点滴で、かなり眠たい状態となります。全身麻酔と異なり局所麻酔では基本的に意識はありますが、局所麻酔の技術的進歩によりほぼ完全な除痛が行え、全身麻酔とほぼ同様に痛みや苦しみをほとんど感じない手術が可能です。

2.手術中に患者と医師のコンタクトを取ることができること

当院では、手術中患者様ご本人にも手術顕微鏡モニターをご覧いただけるようになっています。手術中に、手術の進行状況を理解してもらい、さらに聴こえが良くなったかどうかなども確認します。全身麻酔で意識のない患者さんは、何をされても反応がありません。これは、かえって危険なことでもあり、当院では患者さんとコンタクトを取りながら手術を行います。

3.全身麻酔に関わる多くの薬剤や複雑な手技も不要となること

全身麻酔では、多くの薬剤や人工呼吸器を使用して複雑な管理を行う必要があり、これに伴うトラブルも発生します。もし局所麻酔だけで完全な除痛を得られるのであれば、全身麻酔より遙かに安全で、しかも患者と医師のコンタクトを保てる理想的な手術環境と言えます。

当院の目指している日帰り手術は、決して手抜き手術ではありません。求められる日帰り手術とは、入院手術と比較して手術の安全性と精度が同等かそれ以上のものでなくてはなりません。従って、高い医療技術に裏付けされている必要があります。当院では、今後もさらなる新技術の導入や開発と共に、広く学会発表を行っていく所存です。